時とともに、待てバシイ

 

とても年季の入った剪定ばさみだ。
取ろうと思ったが動かない。きっと木が成長して枝が太り食い込んだのだろう。
はさみを体の一部にずっとかけられたこの木はいったいどう思っているんだろう。
「植木屋さん、忘れ物だよ。こんなことしやがって」
「おい、キミキミ。落ちてたはさみをオイラにかけていくなよー」
「はさみが食い込んで、去年の暮れから痛い痛い」
いえいえ、このマテバシイの木は、時とともに忍耐強くなる「待てバシイ」。
持ち主を、マッテ、待って、まち続けている。